米中首脳会談の冒頭、中国側はアメリカに対して、フェンタニル(オピオイド)の対米密輸を今後は厳しく取り締まると言った。フェンタニルとは、主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドで、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬に指定されているもの。これは、合法的に処方箋をもらって飲む部分もあるが、飲み始めるとどんどんエスカレートして、量が増えていく。
このフェンタニルの安いものがチャイナから密輸されて広まっている。
今回、「厳しく取り締まる」と言ったことで、野放しにしていたことがばれてしまった。
ロバート・ライトハイザー(USTR)通商代表(共和党)は、「これは現代のアヘン戦争だ」と強く批判している。
ところで、今まで米中経済協議のアメリカ代表は、スティーブ・ムニューシン財務長官だった。彼はゴールドマン・サックスの共同経営者として17年間務めた後、映画会社を設立。この人はハト派であり、かつての彼のボスはヘンリー・ポールソンで2006〜2009年ブッシュJr政権の財務長官で、その前の1999年からゴールドマン・サックスのCEOだった。彼は「チャイニーズ・ポールソン」と言われるほどの親中派である。チャイナマーケットに肩入れして、国内企業で大儲けした。ムニューシンは、チャイナのことについては、しばしば彼に尋ねていた。
ムニューシンは、最近、トランプ大統領の信任が落ちている。その理由は、対チャイナにソフト過ぎるから。ポールソンが、チベットやウイグルの人権侵害を強調するなと言うほどの親中派なので、ムニューシンに対してトランプは、「彼の所に行くな」と言っているほどである。
もう一つの理由は、ジェローム・パウエルFRB理事長が利上げをして株価が落ちているが、それを推進したのがムニューシンであるからだ。
そこで、対中交渉の前面にライトハイザーが出てくることになり、対中の締め上げはこれから厳しくなっていくだろう。
今回同行した面々は、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐官、ピーター・ナヴァロ(対中締め上げのシナリオの司令塔)など、いずれも対中タカ派である。これだけでも、強いメッセージであった。「こういう怖いおじさんたちがいるからね」という感じで…。
これに先立って、ペンス副大統領の10月4日、11月16日演説(対中強硬路線の内容)もあり、12月1日の米中経済戦争第1ラウンドはアメリカの圧勝であった。
<ワールドフォーキャストより抜粋>